今回は、少年野球においてピッチャー(投手)にアイシングは必要なのか?また、アイシングの方法も紹介したいと思う。
プロ野球を観ていると、投げ終わった後の投手がポンチョを着ている姿をよく目にする。高校野球でも、肩や肘にサポーターを巻きつけている姿を見たことがあるだろう。
あの姿に「なにをしているのか?」という疑問を抱く人も多いのではないだろうか。
あれは、「アイシング」と呼ばれる行為で、投げ終わり消耗した肩や肘を冷やしているのである。
ではまず、なぜわざわざ温まった身体を冷やすのか、その効果とはどういったものがあるのか。
まずはその点から説明していこう。
アイシングをする意味
一般的にピッチャーは「肩を冷やすな」と口酸っぱく言われる。
しかし、投球後には逆に、「しっかり冷やせ」と言われる。なぜ、冷やしてはいけないとされる肩を、わざわざ氷まで使って冷やすのか。
その理由として、投球した後の肩は熱を持っており、この熱の発生理由は筋肉組織が傷つき、炎症が起きている。
この肩や肘の傷ついた組織を冷やすことにより、痛みを麻痺させることで和らげ、更に炎症を抑えているのである。
また、もうひとつの効果がある。
血管を急激に冷やすことで血流が悪くなるような気もするが、そうではない。
冷やされた箇所は血管が収縮する。アイシングは基本的に10分~20分ほど行うが、その間冷やされ収縮した血管が、アイシングを外した瞬間から元に戻り始める。このとき、収縮した反動で通常よりも大きく膨らみ、肩に溜まった疲労物質が一気に流れ出し、結果的に疲労回復が早まるのである。
これが、投球後にアイシングをする理由である。
しかし、中にはアイシング否定派の人も一定数存在する。事実、50歳まで現役でプロのマウンドに経ち続けた鉄人・山本昌選手は、現役生活でほとんどアイシングを行っていない。
理由は「自分にもよくわからないが、やらなかった」ということで、明確な理由があるという訳ではないようだが、50歳まで現役を続けた投手がしていないということもあり、アイシングをする必要は無いという結論に至る人もいるようだ。
インターネットでアイシングについて検索すると、医学的に効果があるという人もいれば、全く逆効果だという人もいる。
それでは、本当にアイシングは必要なのか?
アイシングは必要?
結論からいえば、「正しく行うのであればやる必要がある。むやみやたらに冷やすだけならやらない方が良い」ということだろう。
高校球児を見ていると、まるで”肩が良くなるおまじない”程度の感覚で、なんとなくアイシングを行っている選手が多い。
冷やす時間もなんとなくだったり、せっかく冷やして疲労回復する身体にしたのにまた練習を始めたりと、これでは全く効果は無いといっても良いだろう。特に、アイシングをした後に練習した場合には逆効果になる可能性が高い。
しっかりとした目的意識を持ち、正しく行うことで、初めてその効果を発揮するのだということを理解しておこう。
さて、それでは正しいアイシングのやり方とは、どのように行うのか。
説明していこう。
[ad#ad]アイシングのやり方
まず、アイシングを行うタイミング。これは投球後であれば30分以内に行うのが望ましい。マウンドを降板したり、試合が終了した時点でアイシングに取り掛かろう。タイミングが遅ければ遅いほど疲労は肩に蓄積し、効果は薄くなってしまうので、なるべく素早く行う必要がある。
次に冷やし方。
氷嚢やアイスバッグを肩や肘に当てるだけでも良いが、固定が難しく、患部の同じ位置を冷やしにくい。
その場合には、市販されている野球用のアイシンググッズを使うことで、冷やす箇所を固定し、的確に冷やそう。
下記に紹介したものの場合、氷嚢とアイスバッグの両方を使うことができるためオススメだ。
冷やす箇所だが、肩の場合には横から見て肩の付け根の部分。肩と二の腕の境目部分でも伝わるだろうか。
肘は周りを全体的に冷やそう。
続いて冷やす時間。むやみやたらに冷やせば効果があるという訳では無いということを理解しよう。
冷やす時間は、15~20分程度が望ましい。冷やす時間が短ければ効果は期待できないし、長すぎる場合には血流が悪い時間が長くなり、炎症自体は抑えられるが疲労回復の効果は低くなってしまう。
しっかり時間を測り、アイシングを行おう。
また、「疲労回復をしている意識」を持つことも大切である。これはプラシーボ効果のように思われてしまうかもしれないが、ハッキリと冷やされている箇所を意識することで、炎症が治まっていく感覚や、血管が収縮されるような感覚を感覚的に身体で覚えるようになる。すると、投球している最中に自分に起こっている違和感にいちはやく気づくことができるようになり、その分対処も早く行えるようになるのだ。
まとめ
いかがだっただろうか。
ただ漠然と、「なんとなくみんなやっているから」という意識では、やる意味は無い。アイシングはおまじないなどではないのだ。
もし、本当はアイシングに意味が無いのであれば、一流のトレーナーが帯同しているプロ野球選手がアイシングをすることは無いはず。やるからには、意味があるということだ。
ハッキリと「なぜ行う必要があるのか」という意識を持つことで、効果は生まれてくる。肩や肘は消耗品。大切に労わってあげることで、今後も長く野球人生を歩むことができる。
正しくアイシングを行うことで、怪我無く野球を楽しめれば、幸いである。