今回は、プロ野球のポスティングシステムとFAの違いとは何か、条件や仕組みを解説していこう。
プロ野球がオフシーズンになってくると話題に上がってくるのが移籍関連。
国内12球団に移籍する選手もいれば、MLB(メジャーリーグ)を目指して海外へと移籍をする選手もいる。
その際に移籍方法としてよく耳にするのが”ポスティングシステム”と”FA移籍”。
最近では、清宮がプロ入りする条件として、ポスティングシステムを導入することを提示したことで話題になった移籍方法でもある。
それでは、具体的に”ポスティングシステム”と”FA移籍”では、どのような違いがあるのだろうか。
さっそく紹介していこう。
ポスティングシステムでの移籍
ポスティングシステムでの移籍の流れ
ポスティングシステムとは、FA権を持っていない選手がMLBに挑戦することが出来る移籍方法である。
FA権を持っていない選手がMLBに移籍する際に”所属球団が”行使する方法である為、選手自身が「MLBに移籍したい」という希望を出しても、球団が容認しなければ行使はできない。
毎年11月1日から翌年2月1日まで申請が可能で、所属球団は交渉権の対価となる譲渡金(上限2000万ドル)を設定。譲渡金は選手ではなく所属球団に支払われる。
MLBのコミッショナーに、選手がポスティングを行使したことを通知し、翌日から30日間の交渉期間が設けられ、譲渡金に応じるMLB全球団が選手との契約交渉を行うことができる。
この制度を条件に提示した清宮は、FA権を持たずともMLBに挑戦できる権利を与えてくれることを条件に提示したということだ。
簡単に説明すると、
1・・・FA権を持たない選手が所属する球団にMLBに行きたいことを伝える
2・・・球団が認めれば、球団はMLBに「この選手と契約することが出来ますよ」と告知する。
3・・・MLBの球団のなかに「契約したい」という球団がいれば、条件などの交渉をした上で契約をする。(複数から契約したいという声があれば、すべての球団と交渉することができる)
4・・・大切な選手を譲ってあげる代わりに、球団は譲渡金を貰う。
という流れになっている。
ポスティングシステムを行使する条件
選手側に行使する為の条件は無いが、飽くまでポスティングシステムを利用するのは”球団側”である。
その為、選手がMLB挑戦を志願したとしても、球団側がポスティングシステム利用を認めなければ行使することは不可能。
球団によっては、ポスティングシステムを利用しての移籍を認めていないこともある。
2012年までのポスティングシステムとの違い
現在は譲渡金に上限金額2000万ドルが設定されているが、2012年までは上限が設けられていなかった。
しかし、この場合、最も高額な落札金額を提示した1球団のみとの交渉となり、もしその球団と交渉が決裂した場合にはその年にMLB挑戦の夢が絶たれてしまうというデメリットがあった。
他にも、高額な落札金額を支払える金持ち球団しか落札できない点も問題視されたことで、上限金額が決められるようになった。
※ポスティングシステムを利用し移籍した主な選手・・・イチロー、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大
[ad#ad]FA権を利用した移籍
FA権のシステム
FAとは「フリーエージェント」の略称であり、球団と選手契約を締結できる権利をもつ選手のことを指す。
NPB組織のいずれの球団とも選手契約を締結できる「国内FA」と、外国のいかなるプロ野球組織の球団も含め、国内外のいずれの球団とも選手契約を締結できる「海外FA」の2種類あり、それぞれ取得する為の日数が違う。
FA権取得条件
一軍選手登録期間145日を1年分として計算し、その合計日数(年数)がFA権取得に必要な日数に達した際に、FA権を持つことができる。
国内FA権取得に掛かる日数・・・累計8年の一軍選手登録期間
海外FA権取得に掛かる日数・・・累計9年の一軍選手登録期間
FA権を取得した場合
FA権を行使する際には、その年の日本シリーズ終了の翌日から申請が可能。「FA宣言選手」として公示され、翌日より国内外全ての球団と契約交渉を行うことが可能となる。
FA宣言選手として公示された場合、再取得は、残留・移籍を問わず4年後となる。FA宣言選手として公示されなければ権利は翌年以降に持ち越される。
移籍した場合、年俸は現状維持が上限に設定される(減額は無制限)。これは、FA権を行使した選手を獲得するために高額な年俸を提示することを抑止するためである。
選手のランク
FA選手にはランクがあり、移籍前の球団の日本人選手を年俸順で並べた際に、1~3位までをAランク、4位~10位をBランク、11位以下はCランクとランク付けされている。
ランクによって移籍する際の条件が変わり、人的補償または金銭補償をする必要がある。
ランク | 人的補償の場合 | 金銭補償の場合 |
---|---|---|
Aランク | プロテクト外の選手1名
+旧年俸の50%の金銭 |
旧年棒の80%の金銭 |
Bランク | プロテクト外の選手1名
+旧年俸の40%倍の金銭 |
旧年棒の60&の金銭 |
Cランク | 補償は不要 | 補償は不要 |
※2017年にFA権を取得する主な選手・・・中田翔(日本ハム)、増井浩俊(日本ハム)、涌井秀章(ロッテ)、牧田和久(西武)
まとめ
ポスティングシステムとFA移籍の違いをまとめると、
ポスティングシステム・・・行使は”球団側”であり、球団が許可しなければ移籍は不可能。MLB挑戦する際に行使される。
FA移籍・・・出場登録期間条件をクリアすれば、誰でも取得可能であり、球団との契約を締結することができる。ただし移籍する際には条件もあり、国内FAと海外FAでも条件が変わる。
つまり、ポスティングシステムとFA権はそもそも「球団側の権利」と「選手側の権利」という大きな違いがある。
大谷翔平(現・日本ハム)も2017年オフにポスティングシステムを行使してのMLB移籍が噂されているが、今オフの移籍の場合、MLBの労使協定により大谷の契約条件が非常に低く制限されてしまうこともあり、交渉は難航している。
昨オフに改定された新労使協定では、25歳未満の海外選手に支払える契約金の総額が最大575万ドル(約6億3000万円)に制限され、マイナー契約からのスタートとなるため、日本のスターである大谷が安値で買い叩かれるとあれば、日本ハム側もポスティング行使での移籍を認めない場合もある。
少しでも安く抑えたいMLBと、少しでも多く譲渡金が欲しいNPB。この譲渡金に関する問題は、まだまだ続いていく可能性が高い。
近年はポスティングでの移籍も認められやすくはなってきているが、今後の譲渡金問題次第では、MLBに挑戦しにくい環境になるだろう。