今回は、阪神タイガース・藤浪晋太郎はイップスなのか、そうなった原因や理由とはなにか、探っていこうと思う。
阪神タイガースのエース候補である藤浪晋太郎。もちろんそれは現在でも揺るがない期待があるだろう。
大谷翔平と同じ世代であり、高校時代には名門・大阪桐蔭のエースとして、史上7校目となる春夏連覇も経験し、まさしく鳴り物入りでプロ野球界に入った。
ルーキーイヤーとなる2013年には10勝を挙げ、続く2014年には11勝、2015年には14勝と、順調にエース投手として仕上がっていたように思えた。
しかし、2016年は右肩の炎症の影響もあり7勝に終わり、不振のシーズンに終わった。ここから、徐々に藤浪に異変が起こり始める。
藤浪晋太郎を襲った制球難。原因はイップスか?
藤浪の現状
2017年、7試合に登板し、投球イニングは6回に満たないという中で与えた四死球は合計36。ほぼ1イニング1度は四死球を与えているような状況。
この状況を重く見た首脳陣は、5月時点で一軍登録を抹消。再調整という形で登録を抹消されたのは、藤浪自身にとっても初の経験だった。
8月16日には一軍で広島戦で登板したものの、4回2/3で与四球5・与死球2。全て右打者への四死球を与えて降板。翌日には再び登録を抹消されてしまった。
藤浪が悩む制球難。特に右打者に顕著に現れ、投げたボールがかなりの頻度で右打者の顔面付近に抜けてしまうという症状が続いている。
もともと四死球の数は多く、2015年には82個、2016年には70個と、どちらの年もリーグワーストの数を与えていたのだが、それでも要所を締めるピッチングで勝利を重ねていった投手だった。
だが2017年はもはや、「コントロールが悪い投手」という話では済まないレベルまで来てしまっている。2軍・イースタンリーグで登板しても四死球を連発。先日、クライマックスシリーズでの登板を賭けた試合でも4イニングで96球を要し、被安打5の4四球で2失点という結果に終わり、掛布監督は「(CSでの登板は)非常に厳しい。これだけ不安定な投球で、短期決戦では・・・」と語っている。
原因はやはりイップスか
やはり、原因はイップスにあるのだろうか。
イップスとは精神的な運動障害の一種であり、簡単に言ってしまえば”上手く投げられなくなる”ことである。
イップスの原因は様々であり、「試合で暴投してしまった」、「死球を与えてしまった」という理由から、「キャッチボールで相手の胸に投げられず、相手に嫌な顔をされた」という経験でも引き金となりやすい。
藤浪の場合、右打者に限って顕著に制球が悪くなる。イップスは”右打者にのみ”というケースもある為、ここまで顕著に結果として出ているのであれば、やはりイップスである可能性は高い。
専門家の見解を見ても、右打者への投球が「ボール」と判定された割合は52.7%(55球のうち、29球がボール<2死球含む>)。一方、左打者へのボール率は30.7%(52球のうち、16球がボール)という結果から、やはり「右打者へのイップスと考えられる」と語っている。
藤浪本人はイップスであることを否定しているが、現に結果としてここまで四死球が多い、しかも明らかに右打者だけに対して、というところを鑑みても、イップスと見て間違いないだろう。
イップスとなってしまった原因はなにか
原因と考えられるのは様々ある。
まず、チーム体制の変化。藤浪の出身校である大阪桐蔭は上下関係には緩く、先輩後輩の垣根があまり無い。チームメイト同士も仲が良く、穏やかに過ごせていた。
阪神タイガースに入団した後も、当時の監督は選手に甘いことで有名な和田監督。エース候補ということもあり、大切に育てられ、厳しく叱責されたことはあまり無かったのではないだろうか。藤浪自身もこの環境があっており、甘やかされるといえば聞こえは悪いが、ノビノビと野球に集中できていたように思う。
しかし2016年、金本監督に変わってからチーム体制は激変。金本監督は昔ながらの体育会系チームを理想としており、仲間同士の競争心を煽り、チーム全体の底上げを図るような方針であった。
藤浪自身も、調子が悪い日に打ち込まれた日には懲罰投球として1試合で161球を投げるなど、完全に体育会系のスタイルとなっている。
藤浪には、あまりにもこの環境が合っていないのではないだろうか。
この環境のなかで試合を崩すようなピッチングをすれば、降板後の叱責は免れない。そして「次こそはしっかり投げないと・・・」と徐々に精神的に追い込まれていけば、イップスに陥ってしまう原因としては充分である。
もうひとつ考えられるのは、2015年に広島・黒田投手に投じたボールではないだろうか。
この打席、黒田はバントの構えで打席に立っていた。藤浪はこれに対し、バントをさせたくなかったのか、ただの制球難だったのかは分からないが、執拗に黒田のインコースを厳しく突いた。2球連続であわやデッドボールになるというようなボールを投じ、黒田は激昂。藤浪に歩み寄り、ベンチからは慌てて両軍が飛び出し、あわや乱闘という騒ぎにまで発展したのである。
もちろん、黒田投手に対してのボールは飽くまで”きっかけ”に過ぎない。
だが、黒田というメジャーも経験した超一流の投手に対して投じたボールが乱闘に発展、というのは、精神的ショックはあまりにも大きかったのではないだろうか。
この体験が引き金となり、その後の投球に影響を及ぼした結果がイップス、というのは充分に考えられる。
[ad#ad]藤浪の復調となるきっかけは・・・
イップスというのは、かなり長引く可能性もある運動障害である。
以前にもイップスについて書かせて頂いたので、詳しくはそちらも参照してほしい。
イップスに陥っていた中日・桂捕手は、コーチとつきっきりの克服を行い、3ヶ月経ってようやくまともな送球ができるようになった。
しかし藤浪の場合、首脳陣もどのように克服させたものか・・・と現段階でも模索している最中。
どうすれば藤浪は再びマウンドで躍動できるのか。
一番手っ取り早いのは、”移籍する”ことのように思える。
現在の体制が合っていないように思える点も考えれば、環境を変えることが一番の克服となるきっかけになるのではないかと個人的には思える。
理想をいえば、パ・リーグに移籍し、新しい気持ちで野球に臨めるのが最良。
長期スパンで回復を待ってくれるような環境であれば、復調も早まるのではないだろうか。
それともうひとつ、「藤浪自身がイップスを認める」ということも、復調には必要な要素だろう。周囲からはイップスを疑われているが、本人は全て否定をしている。
だが、もはやイップスであることは明らか。であるならば、藤浪自身がイップスであることを認め、しっかりと向き合わなければ、治療は難しいのではないだろうか。
まとめ
いかがだっただろうか。
球界のエース候補とまで呼ばれていた藤浪。侍ジャパンにも選出され、日本を背負うようなピッチャーになるのではないかと思われていたが、思わぬ形で停滞をしてしまっている。
歯がゆい思いをしているのは球団も阪神ファンも同じだろう。高身長から放たれる150キロ超えのストレートは、球界を探してもそうそういない逸材であるだけに、一日でも早く復調をしてほしいところだろう。
恐らく今年の復帰はもはや難しいところ。ポストシーズンも控える阪神だが、現段階の藤浪を登板させるのはあまりにも大きいリスクにも成り得る。
今年、そして年明けのオフ期間でどれだけ克服していけるのか。